不動産の相続に関わる税金には何がある?計算方法と節税になる控除も解説!
不動産を相続するとき、遺産となった建物や土地をただ受け取れるだけでなく、税金を課せられることがあります。
発生する税金の種類や税額の計算方法などを把握していないと、不動産の相続にともなう納税で困りかねません。
そこで今回は、不動産の相続に関わる税金の種類にくわえ、税額の計算方法と節税につながる控除も解説します。
不動産の相続に関わる税金の種類
不動産の相続に関わる税金は、主に2種類あります。
それぞれの税金の詳細は以下のとおりです。
税金の種類①登録免許税
遺産となった不動産は、相続直後の段階では故人の名義になっているものです。
相続を機に所有者が変わるため、相続人のほうで名義変更の手続きをしなくてはなりません。
遺産となった不動産を受け取るときの名義変更の手続きを、相続登記といいます。
そして、相続登記のなかで発生する税金が、登録免許税です。
納税方法は基本的に現金ですが、税額が3万円以下なら、収入印紙の使用が認められています。
しかし、実際には税額が3万円を超えていても、収入印紙を使用するケースが多いです。
収入印紙のほうを選びたいときは、法務局まで事前に確認することをおすすめします。
収入印紙の使用が認められたら、法務局や郵便局などで必要なだけの収入印紙を揃えましょう。
課税額に足るだけの収入印紙を揃え、専用の台紙に貼り付けて提出すれば、納税は完了です。
現金で納税するときは、事前に金融機関で入金を済ませなくてはなりません。
登記の手続きのなかで提出するのは、入金時に金融機関から発行された領収証書です。
登記所の窓口で現金を直接納めるわけではないため、注意しましょう。
税金の種類②相続税
相続税は、遺産を受け取る相続人たちへと課せられる税金です。
課税対象は遺産そのもので、故人の現金や不動産などの総額が基礎控除額を超えたら、税金が発生します。
納税が必要なときは、相続開始日から10か月以内に、自分で納付書を作成して手続きを終えなくてはなりません。
相続税は基本的に一括で納めるため、税額が高いときは注意が必要です。
納税方法に関して、現在ではクレジットカード払いが可能です。
ただし、クレジットカード払いを選ぶなら、指定のHPを使用する必要があります。
くわえて、利用限度額の範囲内でしか納税できないうえ、決済のために手数料が別途請求されます。
クレジットカードで納税するときのデメリットは、事前に確認しておきましょう。
不動産の相続に関わる税金の計算方法
不動産の相続に関わる2種類の税金について、税額の計算方法は以下のとおりです。
登録免許税の計算方法
登録免許税の税額は、以下の式で計算できます。
登録免許税=固定資産税評価額×0.4%
計算にあたって必要なのは、固定資産税評価額のみです。
固定資産税評価額は、毎年4月ごろをめどに、不動産の所有者に対して送付される固定資産税納税通知書に載っています。
通知書が手元にないときは、市役所で閲覧・取得できる固定資産評価証明書を確認しましょう。
固定資産税評価額がわかれば、あとは0.4%をかけるだけなので、税額の計算はそれほど難しくありません。
相続税の計算方法
前述のとおり、相続税の課税対象は遺産そのものであり、各遺産の相続税評価額をまず調べなくてはなりません。
土地では路線価方式と倍率方式のどちらかを使うなど、遺産の種類によっては、相続税評価額の計算方法が特殊なので注意しましょう。
相続税評価額を集計していくとき、故人の借金と葬式費用は差し引いて構いません。
たとえば、現金や預金が4,000万円、土地の相続税評価額が5,000万円、借金が400万円、葬式費用が200万円だったとしましょう。
このとき、合計9,000万円の遺産から、借金400万円と葬式費用200万円を差し引くため、遺産の総額は8,400万円となります。
基礎控除額の計算
遺産の総額を計算できたら、次に基礎控除額を超えているかどうかを調べます。
相続税の基礎控除額は固定ではなく、以下の式で個別に計算します。
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
法定相続人の数によって、基礎控除額が変わる点に注意が必要です。
基礎控除額を計算できたら、遺産の総額から差し引きましょう。
相続税の総額の計算
遺産の総額が基礎控除額を超えていたら、相続税が発生します。
各相続人の課税額を計算するにあたり、まずは相続税の総額を調べなくてはなりません。
相続税の総額は、基礎控除額を超えた部分を、法定相続分にあわせて各相続人へと按分して計算します。
按分後の計算式は、以下のとおりです。
按分後の計算式=按分された金額×税率-控除額
各相続人で上記の計算をおこない、計算結果をすべて合算すれば、相続税の総額となります。
各相続人に対する課税額
各相続人に対する課税額は、各自が実際に受け取る遺産の割合に応じて、相続税の総額を按分する形で計算します。
誰が何をどれだけ受け取るかは、遺言書や遺産分割協議で決まります。
多くの遺産を受け取るほど、按分される税額が高くなるため注意が必要です。
また、相続税には税額を2割加算する制度があり、相続人によっては按分された税額が高くなります。
2割加算の対象とされるのは、故人の配偶者・子ども・父母・代襲相続人となった孫以外の相続人です。
不動産の相続に関わる税金を抑える控除
不動産の相続に関わる税金を抑える控除には、以下のものがあります。
配偶者控除
故人の配偶者が遺産を受け取るときは、配偶者控除を使える可能性があります。
本控除が適用されると、配偶者が受け取った遺産に関して、1億6,000万円までは相続税が非課税となります。
くわえて、受け取った遺産が1億6,000万円を超えていても、法定相続分に該当する額までは、相続税がかかりません。
非課税額が高額なのは、残された配偶者の生活を守るためです。
遺産は残された配偶者の生活を守る大切な財産ですが、高額な相続税がかかると、受け取りが難しくなりかねません。
税金が原因で遺産を受け取れないと、残された配偶者が以後の生活に困るおそれがあります。
そのため、配偶者には非課税額の高い控除が用意され、以後の生活に困りにくいように配慮されています。
ただし、適用にあたっては戸籍上の配偶者であることが求められ、籍を入れていない内縁の夫・妻では利用できません。
また、相続税の申告期限までに遺産分割が終わっており、相続税の申告書を税務署まで提出することも必要です。
相次相続控除
相次相続控除は、短期間のうちに身内が相次いで亡くなったときに使える可能性のある制度です。
短期間のうちに相続が続くと、同じ財産に相続税が連続で課せられかねません。
課税の間隔が短いと二重課税になってしまうため、対策として相次相続控除が設けられています。
制度の目的から、相次相続控除を使えるのは、前回の相続から10年以内に限られています。
また、2回目の相続における故人が、1回目の相続で相続人になっており、相続税を課せられていることなども条件です。
相続が連続していても、1回目の相続で相続税が発生していないケースでは、本控除の適用要件を満たせません。
適用要件をすべて満たしたときは、1回目の相続で納税された相続税の一部が、2回目の相続で発生した相続税から控除されます。
まとめ
不動産の相続に関わる税金の種類は、建物や土地の名義変更の手続きにあわせて納める登録免許税と、相続される遺産を課税対象とする相続税の2つです。
登録免許税は、不動産の固定資産税評価額がわかれば税額を簡単に把握できるのに対し、相続税は計算の流れが複雑なので注意が必要です。
税額を抑える控除には、配偶者の生活を守ることを想定した配偶者控除、相続が連続したときの二重課税を防ぐ相次相続控除などがあります。